死んだも同じさ

 

作:偽善者、たけし共作

監修:偽善者

 

第一頁

 

2001年10月 さいたま市の黒田製作所内であった話である。

朝早くから怒鳴り声が響く。声の主は社長の黒田 康行(42)だ。「おい!何をやっているんだ!!」

黒田は、のり弁当をたたきつけながら続けた。「カツ丼とカレーを買ってこいを言っただろう!!」

 

怒られているのは主人公の石田 川之助(38)だ。川之助は申し訳なさそうに「うりっ売り切…売り切れてたもので…」と言うと、

「いいわけなんかしてイイワケ?」 このくだらないことこの上ないシャレに、石田は笑ってしまった。

黒田は殴った。出社した社員達も皆笑っていた。

「お前!!こんな単純な買い物もできないのか?! ないならあるまで探せ!!」

「いっ行ってきます」

「もういいよ!他のヤツに頼むから!!」

「すいません…」

「いいよ!怒ってないから!!!」

その時、ちょうど一人の社員が出社してきた。課長の有野 信男(32)である。「おぃ〜す。」

「やぁ有野君!!今夜ヒマかね?キラーン!」黒田が話し掛けた。

「朝っぱらから好きですねぇ社長!もちろんヒマですよぉぉ」即答であった。

「よしっ!!いつものおでん屋でいいかな?」「イイとも〜!!」

 

その日の夕方、社長と有野は行きつけのおでん屋『おむー』に向かった。後ろには石田が金魚の糞のようについて来た。

「いらっしゃいませぇ〜」店主の北 久貴(47)が明るく迎えてくれた。

「中ジョッキ2つね!」有野が注文した。石田は2人から少し離れて座る。

2人は盛り上がっていた。するとそこに川井 雅志(27)が来た。

「大根とがんも、あと熱燗!」 「やぁ川井君!」黒田が話し掛けた。「あっ!!黒田さん!」

「これは私の部下の有野君ネ」2人は名刺を交換した。

と、川井が川之助に気付いた。「黒田さん、彼は?」 「あぁ、彼?今日初めてだね… 君、名前は?」

はじで飲んでいた男ははあわてて、「あっう゛えっと…石田です

「あぁ…川井です。」 石田は川井の差し出した名刺を奪うように取ると、二つ折りにして内ポケットにしまった。

川井ががんもに手をつけようとすると、北が話し掛けてきた。

「昨日、ドラが8枚のっちまったよぉ〜」 黒田が調子に乗って答える「ホントにぃ〜?」

「ホントだよぉ〜!あっ、でもアリさんには敵わないよぉ〜」

あっでも僕、ドラ9…」と川之助が言いかけたとき、黒田が「学生時代に鍛えたらしいからね!」とすかさず言った。

有野は「いやぁ〜」と頭を掻いている。

あっそろそろ娘の保育園に行かないと。親父さん、お勘定お願い」 「200万円だよぉ〜!」

えっ

「あっはっはっオヤジさんからかうなよ!」川井が言った。 「200円だよぉ〜!」

しかし、既に石田はいなかった。カウンターには200円が置いてあった。

北は「なんなのぉ!?」と言った。

「いやぁ、彼はよくわからんよ!わっはっはっはっは…」黒田が言った。

 

川之助は夜道を歩いていた。時計は9時を指していた。『山羊ぃ保育園』に着く頃には、9時半になっていた。

先生が寝ている娘の哲子(5)をわたしてくれた。寝ている娘を背負いながらまた夜道を歩いていった。

アパートの近くの自販機でオレンジジュースとトマトジュースを買い、アパートに向かった。

部屋に着くと、哲子にと買ったオレンジジュースを冷蔵庫にしまい、そしてトマトジュースと飲んで寝た。

 

次の日、哲子の顔色が悪い。ちょうど日曜で会社が休みなので、休日も開いている病院へ連れて行った。

と、軽い肺炎と診断された。

月曜日になっても娘は治らなかった。

 

 

会社を休みますか?